海外生活でおうおうに経験する「孤独感」。対処の方法を考えていたら、イチロー選手の引退会見を聞くことになりました。心打つ点が多くあったので、海外で生活しておられるあなたにも共感していただきると思います。
海外で生活しているとかんたんに孤独感を感じるものです。言葉が通じない、仕事の仕方がわからない、コミュニケーションのとり方がわからない、周りから「ガイジン」と思われる、そんなこんなで言いしれない寂しさを感じてしまいます。寂しさに対処しようと人一倍頑張ってみたり、明るく振る舞ってみたりしますがそれも疲れてまた孤独感が、もしかしたら結婚したいと無性に思ってみたり、家族のことを思い出して涙が出てきたりすることもあるかもしれません。こんなにエネルギーが要る孤独感や無力感、でもきっと将来あなたを支えるものになると思います。
イチローの引退会見最後の質問
2019年の3月21日、選手生活を終えたイチロー選手は85分の引退会見を行いました。その最後にイチロー選手はこのように話しました。
イチロー引退会見の最後の質問
記者から、
現役時代の孤独感についての返答
すごく深くて思わず保存アメリカに行って外国人だと気づいた。それを気づけたから人の心を慮ったり、人の痛みを想像したりできるようになった。
辛いことは避けずに元気があるうちに挑戦するべき。#イチロー さすが pic.twitter.com/BQ2dE6Zs62— TAKABON (@takabon009) March 21, 2019
アメリカに来て、メジャーリーグに来て、外国人になったこと。アメリカでは僕は外国人ですが。このことは、外国人になったことで、人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れてきましたね。この体験というのは、本を読んだり、情報を取ることはできたりしたとしても、体験しないと自分の中からは生まれないので。孤独を感じて苦しんだことは、多々ありました。ありましたけど、その体験は、未来の自分にとって大きな支えになるんだろうと、今は思います。だから、辛いこと、しんどいことから逃げたいと思うのは当然のことなんですけど、でも、エネルギーのある元気な時にそれに立ち向かっていく、そのことは、すごく人として重要なことなんじではないかなって感じています。
この言葉は、わたくしToshiの心に本当に突き刺さりました。
いまなかった自分が現れた
イチロー選手はここで「今までなかった自分が現れた」と言っておられます。本当に興味深いと思います。今思うこと、それは、もし私が海外で生活していなかったら、イチロー選手のこの言葉にそれほど感動はしていなかったと思います。きっと日本で生活していたなら、すっと耳を通り抜けていく言葉だったでしょう。でも、今は感動している自分が現れています。
当たり前じゃない
海外で生活していると、もう耐えられないんじゃないだろうかと思うほどの孤独感を感じることがあります。日本にいる頃は、自尊心とか自己肯定感とか考えたこともありませんでした。人間関係が苦手な人、仕事ができない人、大切なことを見れていない人と周りの人を厳しく見ていたと思います。でも、海外に行って、「ガイジン」と呼ばれるようになって、自分がそんな人間になってしまいました。言葉が話せないので人間関係が構築できない、その国のやり方がわからないから仕事がうまく行かない、大切なことはわかっているのに気が乱されてどうしても手が付かない。自分は役に立ってはいない、いつも助けを借りなければならない。
この孤独感、この無力感をどうにかしないといけない、私は最初そう思っていました。それで、環境になれないと、仕事で結果を残そうと努力した。でもそんなに直ぐに結果が出るものでもなく、空回りのために余計に無力感を感じる。自分の努力なんて誰もみてくれていないという孤独感。そんな無力感や孤独感だけのように見える海外生活。
そんなとき、今まで常識だと思っていたことがどれだけ特殊だったか、自分の力がいかに弱いのか否応なしに認識させられる。今まで日本でいかに自分はみんなから守られてきていたのかとしり、謙虚な気持ちにさせられました。
ひとりじゃない
そして、ふと横を見ると、今まで気づかなかったけど、いつも支えてくれている人たちがいるんですよね。今まで当たり前に見ていたけど、そのときにやっと有り難みがわかったような気がして。それに驚くことに、いままでできていない人に見えていた人が、実は自分を陰ながら支えていてくれていたということにも気づくことができました。本当に恥ずかしいという言葉につきます。
日本にいる頃は、日本で働く海外の方なんて全然意に介していませんでした。考えるとしても、(当時は偏見なんてないと思っていましたが)今から思えばかなり厳しい見方をしていたと思います。しかし、最近日本に一時帰国して、外国の人達が一生懸命日本語を話して頑張っている姿を見ていると、自分と重ねてしまい、怒る気に離れません。「がんばって!」と応援したくなります。これも海外で生活しなければ感じることがなかったであろう気持ちだと思います。
未来の自分にとって大きな支え
自分が痛いと感じるから、人の痛みがわかる、なんて誰かが言っていました。孤独感は今でも時々私の心をチクチク突き刺します。でもそう考えると、イチロー選手がおっしゃっておられるように、この海外での孤独感は将来の自分をいつか大いに支える経験になるのではないかと思えます。
この記事を呼んでいるあなたも、今海外で言いしれぬ孤独感やホームシック的な感情と戦っておられるかもしれません。でも、忘れないでください。安易な道に逃げずにじっと耐え忍ぶとき、そうした孤独感や無力感はきっとあなたに、違う自分の姿を教えてくれると思います。「エネルギーのある元気な時にそれに立ち向かっていく、そのことは、すごく人として重要なことなんじではないかなって感じています」。全く同感です。