「盗聴器が仕掛けられた! 」「周りから狙われている! 」みんながそんなことないよと言っても確信しているような症状があるなら、統合失調症という病気を疑い、早期の精神科への受診を考えましょう。この記事では、心の病気のひとつである統合失調症について調べてみたいと思います。
誰かが留守宅に侵入、そして職場でも
会社員Sさん(28歳、男性)の場合
5年前にあるマンションに引っ越しました。慣れない職場の仕事で、当時はけっこうストレスでした。しばらくして、私の留守中に誰かが部屋に侵入して、盗聴器を仕掛けたようでした。そしていつも私のことを盗聴しています。そのうち、職場でも同僚がひそひそウワサするようになり、会社の外部の人までもが私の悪口を言うようになりました。私しか知らないはずのことまで言われます。私が考えていることを言葉にして言ってくることもあります。また数人で私のことをあれこれ話し合ったりしています。ときには電波を送ってきて体をしびれさせたりもします。これはきっと誰かに狙われている……と思いました。
上司にいくら訴えても、「そんなことはあり得ないよ」と信じてもらえません。逆に精神科を受診するように勧められました。私は仕方なくメンタルクリニックを受診したのですが、そこで「統合失調症の可能性が考えられる」と言われました。
そのときはショックで愕然としましたが、医者の「ちゃんと薬を飲めば、よくなるから」という言葉を信じて、通院しています。薬を飲み始めてから、幻聴が聞こえることもなくなってきました。厚生労働省ホームページ より
代表的な心の病
いえいえ、統合失調症は精神科で扱う代表的な病気です。統合失調症は精神科医にとってはうつ病と並んでよく出会う病気です。患者数は日本だけで約80万人います。100人に1人がかかる病気と言われています。この比率はとても大きな数で、どんな人にもなりえます。自衛隊のようなメンタルを鍛えているような人でもなる可能性があると言われています。
統合失調症は心の病気です。他の心の病気と同じですが、名前は心の病気ですが、実際には脳の病気です。脳はすべての活動を司っています。感情、思考、身体運動などなど。統合失調症になると脳機能が傷害されて様々な症状が出現します。
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上の記事でもお話しましたが、脳は情報を伝えるのに「神経伝達物質」というものをつかいます。そのなかで「ドーパミン」の出方がおかしくなってしまう、ドーパミンが出すぎてしまうことが原因だと言われています。
しかし脳梗塞や脳出血とは違い、体には症状が出ず、また、原因も詳しくはわかっていません。統合失調症は体の見た目の変化はありませんし、麻痺などの身体症状も現れません。見た目にわかりにくいので、統合失調症の診断や治療は難しいものとなっています。
統合失調症で障害が出る脳の機能は、感覚 と 思考 です。
症状1: 幻聴
感覚とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感のことを指しますが、その中でも統合失調症では聴覚に問題が出ます。ここから統合失調症の代表的な症状である幻聴を引き起こします。この幻聴がとても厄介で自分が嫌な声が聞こえることが多いです。自分にとって嫌なことを言われ続けるので、その影響でさらに気分が沈んだり、それに影響される行動をしてしまうことがあります。
症状2: 妄想
もう一つは思考の障害、思考の障害でよくみられるのは、妄想です。この妄想も厄介で、自分が誰かに狙われているのではないか、嫌われているのではないか、という悪い妄想が出て来やすいです。普通の人なら、好きな子と付き合っている妄想など気分の良くなることを考えるものですが、統合失調症の妄想は違います。統合失調症で見られる妄想は、確信的で訂正が困難、そしてネガティブな内容であることが多いです。それでかなりネガティブな内容のことを言って、周りが絶対そんなことないよと言ったとしても、「いや、絶対にそうだ」と確信している場合は注意が必要です。
この2つの症状、幻聴と妄想は統合失調症の特徴的な症状です。
統合失調症は大体10代から20代に発症しやすいと言われています。もしこのような症状が自分であったり周りの人にあったりしたならば、すぐに精神科に受診しましょう。早く受診すればその分、症状も抑えられるので早期治療が重要です
幻覚や妄想のサイン
- いつも不安そうで、緊張している
- 悪口をいわれた、いじめを受けたと訴えるが、現実には何も起きていない
- 監視や盗聴を受けていると言うので調べたが、何も見つけられない
- ぶつぶつと独り言を言っている
- にやにや笑うことが多い
- 命令する声が聞こえると言う
そのほかのサイン
会話や行動の障害:
- 話にまとまりがなく、何が言いたいのかわからない・相手の話の内容がつかめない
- 作業のミスが多い
意欲の障害:
- 打ち込んできた趣味、楽しみにしていたことに興味を示さなくなった
- 人づきあいを避けて、引きこもるようになった
- 何もせずにゴロゴロしている
- 身なりにまったくかまわなくなり、入浴もしない
感情の障害:
- 感情の動きが少なくなる
- 他人の感情や表情についての理解が苦手になる
厚生労働省ホームページ より
そうですね。この記事では、誰もが起こりうる病気である統合失調症について取り上げました。統合失調症に多い幻覚や妄想の症状は、本人には現実味があってそれが病的な症状だとは気づきにくいという特徴があります。周りの人が気づくことが、早期発見の第一歩となります。家族や周囲の方に以下のようなサインがあることに気づいた時には、早めに精神科への受診を行いましょう。