「生きるのが辛い……」感情や行動そして対人関係が不安定で生活が難しくなってしまう「境界性パーソナリティー障害(境界性人格障害)」通称「ボーダー」。うつ病や摂食障害、リストカットなどの原因にもなることがあるようです。今日は境界性パーソナリティー障害の現れ方や対処法などを調べてみました。日本だけでなく、中国の若者との接し方にも役立つ点になってくるでしょう。
あなたの周りに、付き合うと過度に依存したり束縛したり気持ちが不安定になってリストカットを繰り返すような人っておられませんか?
生活に影響が出るなら、境界性パーソナリティー障害という状態になってしまっているかもしれません。
パーソナリティー障害というのは、生活に影響が出るほどの性格の偏りをいいます。パーソナリティー障害は全部で10種類あります。その中でも最もポピュラーなのが「境界性パーソナリティー障害」です。
境界性パーソナリティー障害は10代から20代の若い女性に多く、全体の8割を占めると言われています。男性は2割と少ないですが、男性の場合、症状に「男性の筋力」が加わり、大変になることが多いようです。自傷行為やうつ状態を伴うことが多いので、パーソナリティー障害の中でも精神科で扱うことが最も多いです。
診断基準としては、これ9つの中で5つ以上当てはまるなら境界性パーソナリティー障害だと診断されます。
- 見捨てられ不安
- 不安定な対人関係(理想かとこき下ろし)
- 不安定な自己意識
- 衝動性
- 自傷行為や自殺行為
- 急激な気分の変化
- 慢性的な空虚感
- 怒りの制御困難
- 一過性の妄想や解離(ストレスに関係)
症状と特徴
では簡単にキーワードでご説明しましょう! キーワードは「境界」です。
境界性パーソナリティー障害の「境界」は、昔の精神病の分類で軽い精神病と重い精神病の中間くらいだとして名付けられた言葉で、現代の医学の理解から考えると「境界」という言葉は全く意味を持ちません。しかしこの「境界」という言葉をキーワードにするとこの障害の特徴を覚えやすくなるんです。
二極思考
まず自分のなかに、まるで「境界」ができているかのように両極端な思考をします。
ものすごく幸せであるというプラスの気分と、
ものすごく不幸であるというマイナスの気分を揺れ動くのです。
「白か黒かの思考」と表現されることもあります。つまり「程々の状態」というものがありません。
例えば、学校のテストで100点をとった100の幸せがあったあとに、部活で先輩から駄目だしされて30の不幸があったとします。普通の人なら差し引き70くらいのまあまあの幸せかなと思います。しかし境界性パーソナリティー障害の人だと、「100か0」「100じゃなかったら0」なので、「幸せが0だ、だめだ!」となってしまうのです。
対人関係の障害
他人に対しても、まるで「境界」があるように、プラスとマイナス、両極端のイメージを揺れ動きます。例えば、恋愛でお付き合いしている時に、
相手へのイメージがプラスの時は、「あなたのこと大好き、あなたがいないとだめ、これからも絶対一緒にいて」となりますが
ちょっとのきっかけでマイナスに転じると「なんで電話に出てくれないの! 私のこと嫌いなの! 見捨てる気なの! ゆるさない!! 」
となってしまいます。つまり「いい人・悪い人」の2つしかありません。欠点や不完全な部分って絶対あって、それでいていいところもあるというのが人間じゃないですか。しかし、境界性パーソナリティー障害は、「70点のいい人」や「50点のまあまあの人」を受け入れることができません。それで、付き合うと過度に依存したり束縛したり気持ちがすぐ不安定になってしまったりするのです。
自傷行為、衝動行為
境界性パーソナリティー障害が問題になるのは、心理的に不安定になる結果、他の障害を合併しやすい点です。うつ病やアルコール依存、過食嘔吐などを伴うことがあります。特に注意が必要なのが、リストカットや過剰服薬などの自傷行為です。境界性パーソナリティー障害の70%が自傷行為をすると言われています。自傷行為を繰り返すことで自傷行為そのものに依存してしまったり、場合によっては死んでしまうこともあります。自傷行為の依存や自殺を防ぐためにも精神科への通院が必要になることがあります。
なお、この境界性パーソナリティー障害は、双極性障害などと鑑別が難しいので、周囲にこのタイプの人がいたとしても、すぐにパーソナリティー障害だと断定はしないほうがいいかもしれません。
原因はまだ十分に解明されていません。性格が形成される幼少期の生活環境が大きいと考えられていて、虐待やいじめとの関連性も指摘されていますが、最近の研究では遺伝的な要素もあると言われています。
境界性パーソナリティ障害の原因
境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)が発症してしまう原因はいくつかあります。
人によって原因は違いますし、家庭環境や生活習慣などでも変わってくるのですが、
主な原因として先天的な要素である脳の脆弱であったり、幼いときから人よりも不安を抱きやすい、メンタルが弱い、集団生活に馴染めずいつの間にか発症してしまったということなども原因としてあります。
また「遺伝」も要因としてあり、もともと境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)になりやすい性格傾向をもって生まれてくる人もいます。
「環境」についていえば、 母親の愛情が必要な幼い時期に愛情や褒め言葉や安定した関係が築けないと引き起こされる可能性があるということです。また、クラスメイトなどから無視されたり、恋人などからDVや言葉の暴力を受けたことによるトラウマやフラッシュバックによって起こってしまったり、自分自身の理想から遠く離れた現実に直面したことによる悲壮感などが原因により、境界性人格障害になる可能性もあります。
ここ日本だけでなく、経済の発展が急速に高まっている中国その他の国でも、経済の栄華の影に人々のストレスも高まっている状況が見られます。特に、アジアの多くの国では、まだ年金制度などが十分に整っていないので、子供を祖父母に預けて、親は出稼ぎにでかけるという習慣があります。このことから、子供の頃に愛情が不足してしまうという問題も生じています。
対処法
では境界性パーソナリティー障害の人はどうすればいいでしょうか。
自分の特性を分析する
重要なのが、自分の特性をしっかり分析することです。どんな時に悲しくなるのか、どんな時に起こるのか、どんな時に依存するのか、どんな時に自傷行為を行うか、そのようなことをあらかじめ把握しておくと突然の気分の変化にも振り回されにくくなります。
ストレス発散法を見つける
また、自傷行為に変わるストレス発散法を見つけることも助けになります。カラオケで大声を出すでもいい、音楽を爆音できくでもいい、運動やスポーツに打ち込むでもいい、自傷行為に走らないことが大切です。
長い目で見る
接し方としては、とにかく「ルール」を決めることが助けになります。できること・できないことを明確にします。すべての期待に答えようとすると助けるあなたのほうが疲れ切ってしまいます。それに相手も頼り切ってしまう形になってしまいます。これは長い目での助けになりません。できる範囲を決めて、そのなかに限って、きちんとサポートしてあげると決めてください。
境界性パーソナリティー障害はつらい状況ではありますが、年令を重ねるごとに落ち着くと言われています。いくら性格の問題でも、昔バリバリの不良だった人が落ち着くように、時間が立つにつれて落ち着いてくるものですよね。ですので本人も周囲も「一生モノなんだ」と悩む必要はなく、気持ちを楽にするのが一番だと思われます。