ベトナムで一緒に働いている人から勧められた「この世界の片隅に」という2016年公開の映画を見ました。舞台は80年も前の時代なのに、外国で生活する私にも共感できる点がたくさんありましたので、海外生活者目線で感想をお伝えできればと思います。
この世界の片隅に あらすじ
今回見たのは2016年版の映画「この世界の片隅に」です。戦争中の時代に、ヒロイン「すず」が懸命に生きる物語です。すずは、広島市江波で生まれた絵が得意な少女。昭和19年、20キロ離れた町・呉に嫁ぎ18歳で一家の主婦となったすずは、あらゆるものが欠乏していくなかで、日々の食卓を作り出すために工夫を凝らして生活していきます。しかし、戦争は進み、日本海軍の根拠地だった呉は、幾度もの空襲に襲われることになります。すずが大事に思っていた身近なものが奪われていきますが、それでもなお、毎日を築くすずの営みは終わりません。そして、昭和20年の夏がやってきます。
戦争の話といえば、祖父母から、防空警報のことやB-29が飛んできたことなどを聞かされたことがあります。修学旅行は広島でしたし、大きくなってから携わっているボランティア活動でも年配の方々から戦争について聞いていました。たしかに悲しく愚かな戦争だとおもうものの、私の生活との関連性を感じることはありませんでした。しかし、この映画を見て、その時代の人々もただ戦争という時代に生きていただけで、私達と同じく、一日一日を懸命に生き、それでも居場所を失う悲しみを感じ、それでもまた一日一日生きていたんだということに心が動かされました
一日一日を生きる
このアニメの特徴として、戦闘シーンがなく、あくまで戦時中の人たちの毎日毎日の生活にシャッターが切られているという点です。その生き様は、私が以前考えていたような愚かな祖父母像ではなく、私達と同じ、毎日毎日を懸命に生きる人々の姿でした。
海外での仕事、日本にいた頃はとても聞こえがよく憧れでしたが、いざ行ってみると何もできていない自分。でも難しい状況でも笑って、一日一日を生きる。派手じゃない、すごいともいわれない、でも毎日毎日懸命に頑張っていく姿は愛らしく、美しい、そう考えさせられました。
居場所があること 居場所がなくなること
このアニメの一つの大きな軸として「居場所」という言葉があります。「この世界の片隅に」というタイトルも暗にそのことを示しています。主人公の「すず」は絵がかける女の子、そして嫁いだお家で真面目に働くことに自分を見出していました。しかし、あることが起きて絵を描くことも、家族のためにたくさん働くこともできなくなってしまいます。今まで居場所だと思っていたものを失った「すず」、しかしそんなときにもまだここにいてもいいってことを彼女はわかっていきます。
居場所があることは大切なことです。しかし、居場所がなくなるように思える経験も大事です。私も海外に出てその事に気づきました。今まで日本で「〜ができる自分」「〜が上手な自分」というところに居場所を持っていた私。しかし海外ではまるで腕を失ったかのように何もできなくなった私。でも、そんなときも私はこの世界にいても良かったんです。
今日も世界の片隅で生きていきます
ベトナムで一緒に働いている方から勧められた「この世界の片隅に」という2016年公開の映画の感想を書いてみました。舞台は80年も前の時代なのに、外国で生活する私にも共感できる点がたくさんある映画でした。
ちなみに今回見たのは2016年に映画化されたこちらの版です。2019/12 今月に新作ができたらしいですが、そちらは良い映画かどうかはわかりかねますのでよろしくお願いします。私が感動した2016年の版は上のリンクからご覧ください。